うえだ眼科クリニックの
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うえだ眼科にデジタル手術支援システム(V-ynk)が 杉並区で初導入されました!

2021年10月22日

 当院に最新の白内障手術機械である、デジタル手術支援システム:V-Lynk が杉並区で初導入されました(日本全国では52施設、都内では9施設のみの導入:2021年6月現在)。全世界100万症例のデータを参照したAIによる正確な計測システムと、リアルタイムに使用できるAR機能(拡張現実)を利用した新しい白内障手術支援システムです。その内容は簡単に言うと

1,手術前の眼内レンズ測定について世界100万症例のデータを参照した、AIによる正確な度数決定がなされるようになります。また、それらの施設・術者毎のデータが蓄積されることで、より正確性を増してゆく。

2,IOL挿入術における主要な測定値をAR(拡張現実)機能により術野にリアルタイム表示可能であり、それによる手術精度の向上が期待される。

3,乱視矯正においては、リアルタイムのデータを参照して乱視を矯正できるため、特に、乱視矯正の白内障手術や、多焦点眼内レンズなどのプレミアム眼内レンズ使用時に得られる術後裸眼視力の精度が向上する。

ORAの特長
より正確なレンズ計算+手術中のリアルタイム測定による先進の白内障手術

等ということです。これまでのレーザー白内障手術などの新しい手技を用いた手術は、術者に関係なく機械が手術をするという側面があり、手術中のリアルタイムのデータは参照されておりませんでした。

 しかし、こちらの手術支援システムはリアルタイムの測定による正確性を追求しており、さらに面白いのがデータが蓄積されることで、正確性がどんどん向上するということです。

 言い換えれば ”成長する手術システム” であるとも言えます。これからは、オーダーメイドの医療も大事になってくるかと思います。患者さん一人一人に寄り添った手術をできるように頑張っていきたいと思います。

V-Lynkについて、ご興味ある方はこちらからどうぞ。

多焦点眼内レンズの最終進化型!?連続焦点型レンズ “テクニスシナジー(TECNIS Synergy)” 登場!!

2021年06月03日

皆さん、こんにちは うえだ眼科クリニック院長 上田至亮 です。

 前回は海外からの輸入レンズである焦点分散型最新の5焦点眼内レンズの “INTENSITY” のお話をしましたが、今回のレンズは深度拡張型である ”テクニスシンフォニー” の進化型レンズともいわれる、連続焦点型レンズ ”テクニスシナジー” を今年4月から当院でも導入を始めましたので、そちらのお話をしてゆきたいと思います。

 簡単には当院のHP ”多焦点眼内レンズ(老眼矯正眼内レンズ)(こちらをクリック)” にも説明がありますが、ブログではもう少し掘り下げて実際の見え方や新しいテクノロジーの話をしてみましょう。では、まずレンズの具体的な特徴を考察してゆきましょう。

★連続焦点型レンズの5つのポイント
  ①焦点拡張型(EDOF)レンズと2焦点眼内レンズのメリットを融合させた最新レンズ
  ②手元約30cm~遠方までの連続した広い明視域をもつ連続焦点型
  ③眼全体の色収差を低減により良好なコントラスト感度を維持して暗所でも視力良好
  ④乱視矯正の対応が可能
  ⑤夜間の異常光視症(ハロ・グレア・スターバースト)はあり
    では、一つずつ説明してゆきましょう

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①焦点拡張型(EDOF)レンズと2焦点眼内レンズのメリットを融合させた最新レンズ

 テクニスシナジーは従来の焦点深度拡張型(EDOF)レンズであるテクニスシンフォニーと、2焦点型レンズであるテクニスマルチを組み合わせた、連続焦点型レンズとして設計されおり、二つのレンズのいいところを融合させたハイブリッドレンズとなっております。

②手元約30cm~遠方までの連続した広い明視域をもつ連続焦点型レンズ

 その特徴は読んで字のごとく、焦点が連続的になるようにデザインされており、手元約30cm~遠方までを、裸眼(めがね無し)で0.8以上の視力が出るスペックを持つのが特徴です。

 これまでの3焦点レンズは手元の焦点距離が40cmでしたが、これは大柄な欧米人にとってはそれほど気にならない数字かもしれませんが、体形が小さめの日本人にとってはもう少し近距離が見える方がいいとも言われてきましたので、日本人向けのレンズともいえるかもしれません。

 連続焦点型レンズ、3焦点レンズ、深度拡張型レンズ、2焦点レンズ、単焦点レンズの距離別見え方と眼鏡装用頻度イメージです。

③眼全体の色収差を低減により、良好なコントラスト感度を維持して暗所でも視力良好

 通常これまでの多焦点レンズでは光の分散によるエネルギーロスのため、視力のコントラスト低下が指摘されていました。当院でも使用している3焦点多焦点レンズのパンオプティクスでは、そのエネルギーロスを少なくすることでコントラスト低下の回避に貢献してましたが、テクニスシナジーでも、以下の図のように、通常の明所での瞳孔径3㎜(左図)に加えて、瞳孔径が大きくなる暗所での瞳孔径5㎜(右図)でも、3焦点眼内レンズと比較してもコントラスト感度が良好であることを特徴としています。

 明所に比較して暗所では3焦点眼内レンズのコントラスト感度が落ちています。

 これはテクニスシナジーレンズに用いられている、以下の“ChromAlign™ Technologys”といわれるデザインにより瞳孔径に依存せず、低照度下においても鮮明な視機能を維持できるようになっていて、そのメリットとしては、薄暗い屋内やレストランでも文字が読みやすいといったのが特徴です。。

右の画像のように収差を補正する機能が無い場合、赤色から青色までの光が光の屈折差により分散することでコントラストが低下しますが、シナジーではそれを補正する機能が盛り込まれていることで、左図のように収差を減らすような働きがあります。

④乱視矯正の対応が可能

 もともと乱視がある方の大半は、“角膜”に乱視があるためにものを見る時に、二つに見えたりゆがんで見えたりする、これが乱視による視力低下です。白内障手術は水晶体を除去してレンズを入れるので、角膜のゆがみまでは補正できません。

 それを可能にしたのが、乱視矯正レンズという事で、こちら(こちらをクリック)” のページにもあるとおり、当院ではよりよい視力をお届けするために乱視矯正の白内障に力を入れていて、このテクニスシナジーは乱視矯正にも対応したレンズとなっております。

 せっかく多焦点眼内レンズを入れるのであれば乱視矯正もしっかりできるレンズということで、この点もおすすめできるレンズという事です。(なお、乱視矯正が必要かどうかは担当医の判断になりますので、乱視が心配な方は担当医とよく相談されてください。)

⑤夜間の異常光視症(ハロ・グレア・スターバースト)はあり

 これはどの多焦点眼内レンズにも言えるのですが、広い明視域を持つがゆえに、光が散乱してでるハロ・グレア・スターバーストはどうしても出るようです。ただし、それを紫波長の光をカットすることで、まぶしさを低減する機能もあるためか、ある程度日常の生活レベルには支障がないようです。

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以上が、テクニスシナジーのまとめとなり、簡単にまとめるとメリットとしては以下の通り

 という事ですね、正直な話、これ以上のレンズをモデリングしようとしても、さらなるデメリットなども出てくるような気もしますし、今回のテクニスシナジーは多焦点眼内レンズの最終型に近いレンズという印象を持っています。

 いずれにしても、担当医とよく相談した上で単焦点眼内レンズも含めて、ご自身にあったレンズを決めていただき、皆さんのQOV(=Quality of Vision:視覚の質 )が向上することを祈っております。

最後にテクニスシナジーの紹介の動画を入れてみました。参考までにどうぞ

世界初! 5焦点眼内レンズ:INTENSITY (インテンシティ)のお話

2020年12月17日

皆さん、こんにちは うえだ眼科クリニック院長 上田至亮 です。

今回は、最新の5焦点眼内レンズのお話です。

 近年、老眼矯正レンズともいわれる多焦点眼内レンズが開発され、白内障の手術時に摘出された水晶体の代わりに多焦点眼内レンズを移植することで、遠近の両方が見えやすくなるというレンズが開発されています。

 そんな中、これまで2焦点レンズ・深度拡張型・3焦点レンズ等様々なレンズが発売されてきましたが、イスラエルのHanita社が世界初となる5焦点眼内レンズを発売し、2020年9月から日本でも取り扱いが開始されたので当院でも導入を決定いたしました。

 簡単には、当院のHP ”多焦点眼内レンズ(老眼矯正眼内レンズ)(こちらをクリック)” に説明がありますが、ブログではもう少し掘り下げて、実際の見え方や新しいテクノロジーの話をしてみます。

①、そもそも、多焦点眼内レンズというのがどういう構造をしているかというと、レンズ自体が段差を持つような構造を持つ(上の画像で眼内レンズに線が入っている部分が段差です。)ことで、目に入ってくる光を分散して遠くと近くを同時に見ているというのが、多焦点眼内レンズの特徴です。そのため、単焦点眼内レンズより、それぞれの距離についての見え方の質が若干低下するのがデメリットとなりますが、大半の方は日常生活において強い支障がでることは少なく、眼鏡をかける頻度を減らせるという利便性もあって使用されています。

②、具体的には下図のように、距離毎の光を分散させるように配分 (図1) することでインテンシティは 5つの焦点距離(40cm・60cm・80cm・133cm・5m)を持ち、日常のあらゆる活動をカバーできるようになりました。

(図1) INTENSITY 距離毎の光の配分曲線

③、また、最新の特許に基づいた独自のアルゴリズムによるフーリエ変換で計算された回折構造をもつため、下図のように従来のレンズにないほどの光エネルギーの損失(エネルギーロス)が低下しています(図2)。

(図2)INTENSITY と3焦点レンズの光透過率とエネルギーロス比較

④、そのため、これまで多焦点眼内レンズで出やすいとされていたハロー等、光の ”にじみ” がより少なくなることで、自然な見え方をえられるようになりました(図3)。

(図3)INTENSITY と3焦点のハローの比較

⑤、また、それぞれの距離での見え方がよりはっきりとすることで、従来の多焦点眼内レンズよりも見え方の改善が得られ、より理想とする見え方が得られたと考えられています(図4)。

(図4)INTENSITY と3焦点の見え方イメージの比較

⑥ 欠点としては輸入レンズとなりますので、輸入の手続きが輸送の時間として3-4週間程度かかること。日本では未認可の為、自費診療での手術が必要となること。 先に述べましたように、どうしても多少はぼやけ感が出る可能性はあるといったところです。

 いずれにしても、群雄割拠の眼内レンズ業界にも、新しい風がどんどん吹いてきているのを感じる日々です。これからも、しっかりと勉強して皆様に適切な眼科医療を届けたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

うえだ眼科クリニックでは 眼内レンズが ”無限触り放題” です。

2020年12月05日

 皆様こんにちは、うえだ眼科クリニック 院長 上田 至亮です。

 さて、いろんな眼科のホームページで白内障の説明ページを見ていると、眼にすることがある ”眼内レンズ” の画像ですが、実際はどの程度の大きさなのか、硬さはどのくらいなのかなど、実物を見た方はいらっしゃいますでしょうか? おそらく、白内障手術を終えたほとんどの方の目の中には眼内レンズが入っているにもかかわらず、実物を見たことがない方が多いと思います。

 ということで、当院では白内障の手術をするときには必ず眼内レンズの ”実物” を見せつつ、触っていただき眼内レンズがどういうものかを説明しているのですが、実際の大きさは下の図のように指先くらいしかありません。

左が ”単焦点眼内レンズ” で、右側が ”老眼矯正レンズ” ともいわれる ”多焦点眼内レンズ” (MINI WELL READY)です。指先の大きさと比べると、ずいぶん小さいのがわかりますね。

 図の説明のように、それぞれ ”単焦点眼内レンズ” とMINI WELL READYという ”多焦点眼内レンズ” になるわけですが多焦点眼内レンズには老眼矯正の効果もあるのが特徴です。 同じように見えてこの小さな構造体の中に複雑な機能が詰まっているんですね。 先達の研究者の方々の努力と医学の発展はすごいものだと思います。

 今日はくしくも我が家の子供も好きな ”鬼滅の刃” の最終巻発売日でした。”無限列車” ならぬ、 眼内レンズ ”無限触り放題” という事で、ご興味ある方は当院に相談にいらしてくださいね。

多焦点眼内レンズ(老眼矯正眼内レンズ)の取り扱いについて

2020年09月17日

 さて、実は当院でも白内障の時に使用する、老眼矯正眼内レンズともいわれれる”多焦点眼内レンズ”の取り扱いを実施しております。最近はインターネットの普及で、ご高齢の患者様からも ”多焦点レンズを扱っていますか?” などと話を聞かれることもありますが、レンズの種類もいろいろあるという事で、詳細についてまでは診療中にお話しする時間がなかなか取れないのが現状です。

 そこで、当院では多焦点眼内レンズに興味がある方には、手術の説明実施の時に詳細なレンズの機能やメリット・デメリットについて、説明をさせていただいており、資材として動画や冊子を活用しております。

 なお、詳細な多焦点眼内レンズの情報を提供するために、現在HPを誠意改修中なのですが、参考までにユーチューブに動画をアップしてみました。ご興味ある方もいらっしゃると思いますので、ご参考までにどうぞ。

 ちなみに、白内障手術の時に乱視矯正のレンズを入れることで、もともと角膜の乱視が強い方は乱視を矯正することもでき、もちろんこちらの多焦点眼内レンズにも乱視矯正の効果を持たせたものも存在します。

 一生に一度の白内障手術、どういうレンズを入れればいいか迷いますよね。困ったときは、ただお話を聞くだけではなくて、担当医に積極的に相談してくださいね。