世界初! 5焦点眼内レンズ:INTENSITY (インテンシティ)のお話
2020年12月17日
皆さん、こんにちは うえだ眼科クリニック院長 上田至亮 です。
今回は、最新の5焦点眼内レンズのお話です。
近年、老眼矯正レンズともいわれる多焦点眼内レンズが開発され、白内障の手術時に摘出された水晶体の代わりに多焦点眼内レンズを移植することで、遠近の両方が見えやすくなるというレンズが開発されています。
そんな中、これまで2焦点レンズ・深度拡張型・3焦点レンズ等様々なレンズが発売されてきましたが、イスラエルのHanita社が世界初となる5焦点眼内レンズを発売し、2020年9月から日本でも取り扱いが開始されたので当院でも導入を決定いたしました。
簡単には、当院のHP ”多焦点眼内レンズ(老眼矯正眼内レンズ)(こちらをクリック)” に説明がありますが、ブログではもう少し掘り下げて、実際の見え方や新しいテクノロジーの話をしてみます。
①、そもそも、多焦点眼内レンズというのがどういう構造をしているかというと、レンズ自体が段差を持つような構造を持つ(上の画像で眼内レンズに線が入っている部分が段差です。)ことで、目に入ってくる光を分散して遠くと近くを同時に見ているというのが、多焦点眼内レンズの特徴です。そのため、単焦点眼内レンズより、それぞれの距離についての見え方の質が若干低下するのがデメリットとなりますが、大半の方は日常生活において強い支障がでることは少なく、眼鏡をかける頻度を減らせるという利便性もあって使用されています。
②、具体的には下図のように、距離毎の光を分散させるように配分 (図1) することでインテンシティは 5つの焦点距離(40cm・60cm・80cm・133cm・5m)を持ち、日常のあらゆる活動をカバーできるようになりました。
③、また、最新の特許に基づいた独自のアルゴリズムによるフーリエ変換で計算された回折構造をもつため、下図のように従来のレンズにないほどの光エネルギーの損失(エネルギーロス)が低下しています(図2)。
④、そのため、これまで多焦点眼内レンズで出やすいとされていたハロー等、光の ”にじみ” がより少なくなることで、自然な見え方をえられるようになりました(図3)。
⑤、また、それぞれの距離での見え方がよりはっきりとすることで、従来の多焦点眼内レンズよりも見え方の改善が得られ、より理想とする見え方が得られたと考えられています(図4)。
⑥ 欠点としては輸入レンズとなりますので、輸入の手続きが輸送の時間として3-4週間程度かかること。日本では未認可の為、自費診療での手術が必要となること。 先に述べましたように、どうしても多少はぼやけ感が出る可能性はあるといったところです。
いずれにしても、群雄割拠の眼内レンズ業界にも、新しい風がどんどん吹いてきているのを感じる日々です。これからも、しっかりと勉強して皆様に適切な眼科医療を届けたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。