うえだ眼科クリニックの
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iStent inject®W:低侵襲緑内障手術(MIGS)併用の白内障手術の真価

2023年03月17日

 こんにちは、うえだ眼科クリニック 院長 上田です。今回のブログでは当院で昨年から開始した、低侵襲緑内障併用(MIGS)白内障手術のお話をさせていただきます。


 じつは去年の11月から開始したMIGSについては、一度私のブログで報告済み ”◎iStent(アイステント):低侵襲緑内障手術(MIGS)併用の白内障手術はじめました。(こちらをクリック)、” なのですが、当院ではすでに多くの患者様からのご要望により、アイステント併用の白内障手術開始から10例以上を経験して、アメリカ本社のGLAUKOSから認定される ”iSTENT Certification” を、当院の院長 上田 至亮 が頂くこととなりました。

こちらが認定証となります。正式にアメリカのグラウコス”GLAUKOS”社から認定された「医師」に発行される認定証ということで、杉並区では初の認定となりました。

 では、低侵襲緑内障手術(MIGS)併用の白内障手術が、患者様にどのようなメリットがあるかという話を、最新の情報とともにお話をしてゆきたいと思います。


 まず、当院で実施している、iStent inject®W は、いわゆる第2世代のステントということで、多くの臨床成績のデータが近年になって出てきています(第1世代は単に”アイステント”と呼ばれています。)。その中で、これまでは緑内障のステントを使用された患者さんでは、手術前より緑内障の点眼の本数を減らすことが出来たという報告や、もともと普通の白内障により眼圧は低下するという報告があったのですが、アイステントを併用することで、より眼圧を減少させることができるという報告も見られていました。


 その中で印象的だったのが、第2世代のアイステントを使用することで7-8割の方が緑内障の点眼を減らすことができたたという報告(第78回眼科臨床臨床学会セミナーから抜粋)があったり、海外での報告では当院で使用している第2世代のiStent inject®Wのほうが,第一世代のアイステントよりも眼圧下降に優れているというデータ(guedes RAP et al Adv Thr 2019)もあるようでした。


 また、白内障手術時にアイステントを入れた症例では、いったん緑内障の点眼はすべて中止して経過観察をするのですが、その後に眼圧が安定して、手術後に点眼を再開せずに済んだ症例については第1世代のアイステントでは70%であったのに対して、当院で使用している第2世代のiStent inject®Wを使用した症例については90%近く(第78回眼科臨床臨床学会セミナーから抜粋)が点眼を再開せずにすんでいるという報告もあり、より点眼の再開率が低くなっていると報告もされており、緑内障併用手術の器具としては、よりよい成績を残しているということが報告されておりました。


 近年は、団塊の世代が退職後に充実した老後生活を送りつつ、より良い人生を求めて生活の質(QOL:Quarity of life)を高めることが求められている時代です。その中で少しでも点眼のわずらわしさから解放され、快適な老後を過ごすための一つの手段として白内障手術をするときの併用手段としての、iStent inject®W の併用手術が広がることで、少しでも皆様の人生のより良い視力の質:QOV(Quality of vision)が得られるに願っております。

 ぜひ白内障手術を決められた際に、緑内障で点眼を使用されている患者様は、アイステント手術の適応について、担当医に相談されてみてください。

◎iStent(アイステント):低侵襲緑内障手術(MIGS)併用の白内障手術はじめました。

2022年11月10日

こんにちは、うえだ眼科クリニック 院長 上田です。今回のブログですが、当院で2022年11月より開始しました低侵襲緑内障手術併用の白内障手術のお話をさせていただきます。さて、では低侵襲緑内障手術というのはどういうものかといいますと、iStent(アイステント)(図1)といわれる、微小な金属の ”ステント” といわれる器具を白内障手術をするときに目の中に留置する手術となっていて、この手術は最近流行りとなっている、低侵襲緑内障手術(MIGS : micro invasive glaucoma surgery)という、手術に分類されております。

図1、この指の先に写っている、黒い粒がアイステントです。小さいですよね。

●アイステントって?

 では、そのアイステントはどういうものかというと、緑内障を治療するために使われる医療機器で、医療用グレードのチタン合金でできています。このiStentを眼の中の組織に埋め込むことで、房水(ぼうすい)と言われる、目の眼圧を調整する液体の排出循環を改善し、眼圧を低下、安定することが目的です。当院で使用しているアイステントの手術は白内障手術と同時に行うものです。白内障手術では小さな切り口を作りますが、白内障手術の最後に、その小さな切り口からiStentを挿入して、繊維柱帯という眼の組織に埋め込みま(図2)すが、痛みを感じることはほとんどありません。

図2、繊維柱帯といわれる部分に挿入することで、目の中の水の循環が改善して、眼圧が下がる仕組みです。

 なお、アイステントは2014年から全世界で20万眼以上に使用されていて日本でも2017年から認可され、日本眼科学会の指導の下の講習会を受講し、アイステントに関する技能や手技に伴う合併症等の知識を得た医師のみが行える治療です。

●利点と安全性、そして危険性について

 この手術は白内障手術と同時に行い、挿入に要する時間は5分程度で済みますので、少ない侵襲で術後の回復が早い上に、眼圧を下げる効果が期待できます。また手術後に眼圧が下がること(個人差はあるものの緑内障点眼1種類分:1年後で3~8mmHg程度の減少)で、緑内障治療用の点眼薬の数を減らせる可能性がありますので、緑内障の点眼治療中の患者さんにとっては、点眼の数が減ることで点眼の手間から解放されたり、医療コストの削減にもつながるメリットがあります。ただし、全ての緑内障が適応になる訳ではなく開放隅角型の緑内障が適応になります。なお、安全性として、有害事象として報告されているのは、出血や炎症、目の違和感、ステントの詰まり、一過性の高眼圧や低眼圧などとなっております。

 以上、当院で開始した新しい治療のお話でした。詳細についてご興味あるかたは、ぜひ診療の時にでもお尋ねくださいね。眼科の手術は日々進化しており、新しい機材や手術方法がどんどんと開発されていますので、これからもそれらを勉強しつつ、常に最新の医療を皆様に届けたいと思っておりますので、今後もよろしくお願いいたします。

うえだ眼科クリニック、6月7日の手術内容

2022年06月07日

本日、白内障手術7件(多焦点レンズ3件、乱視矯正1件を含む)、霰粒腫切開手術、緑内障手術の合計9件の手術を無事に終了いたしました。また、白内障手術につきましては先進のORA(術中波面収差解析装置)と連動したV-Lynkシステム(ORA SYSTEM™ with VerifEye™ Lynk)による手術で実施いたしました。明日の皆さまの手術後の笑顔を楽しみにしています。