白内障における水晶体嚢拡張リング(CTR)について
2019年04月21日
2019年4月18~21日 日本眼科学会総会が、東京国際フォーラムで実施されました。そのなかで、21日の最終日に実施された“白内障における水晶体嚢拡張リング(CTR)講習会”に院長が参加いたしました。
さて、水晶体囊拡張リング(CTR : capsular tension ring)が何かというと下の通りのプラスチック(正確にはポリメチルメタクリレート=PMMAといいます。)で出来た手術機材となります。通常は白内障手術の時に使われるのですが、どういったシーンで使用されるか本日はご紹介させて頂きます。
通常、白内障手術の方法としては、濁ったレンズを除去するために、水晶体囊(すいしょうたいのう)という水晶体を覆っている袋だけを残して中身だけを吸い取ります。 その後に、水晶体嚢の中に人工眼内レンズ(IOL)を移植します。(下図参照)水晶体嚢はチン氏帯という細い糸のような組織で眼の中につるされてハンモックのようになっているのですが、何らかの眼の病気のために、チン小帯が弱かったり、一部切れていたりすると、水晶体を吸い出したり、人工眼内レンズを入れる時にチン氏帯がすべて切れてしまうという合併症が起こる可能性があります。
そのようなときに使用されるのが、今回私が講習会で勉強してきた水晶体囊拡張リング(CTR : capsular tension ring)です。一部のチン氏帯が断裂している場合に手術中にCTRを挿入することにより、手術の安全な遂行が可能となり、IOLの長期的な眼内安定性が保持されることになります。海外では昔から使われていたようなのですが、近年になって日本でも使用されるようになってきており、HOYAから国内承認の物が発売されております。
ただし、使用条件があり、簡単に言うと
CTRの実施医基準:白内障手術を 100 件以上経験し,眼内レンズ挿入術に習熟している者 http://www.nichigan.or.jp/member/guideline/ctr.jsp 日本眼科学会、CTR使用ガイドラインより抜粋
となっており私の場合、基準は満たしておりますので、使用のために必要な講習会にて現状の使用例などの勉強をしてきました。
眼科の先人たちが様々な試行錯誤で作成していった手術デバイスのおかげで、今日の患者さんの視力が保たれているというのは、たゆまぬ医学の発展のために努力している先生方の功績と思います。その努力に答えたく、地域の眼科医療に貢献してゆきたいと思います。