うえだ眼科クリニックの
ブログ

白内障手術:両眼別々にする? それとも両眼同時?

2020年09月20日

 皆様こんにちは、うえだ眼科クリニック院長 上田 至亮です。さて、当院では、白内障手術をするときは、基本的に両眼を別々に手術実施しているのですが、 たまに患者さんに ”両眼を同時に手術することはできますか?” と聞かれることもあります。ということで、今日は題名の通り白内障手術は両目同時がいいか?、または別々がいいか?といった話題について、私の個人的見解からのお話をさせていただきます。

 ではまず、わかりやすくするために、同時手術・別々手術のメリット・デメリットの比較を一覧表にしてみました。では、それぞれ項目ごとに説明してゆきましょう。

 表1、白内障、同時手術と、別々手術の比較表

 ①:手術の通院頻度ですが、もちろん手術後には、ある程度細やかな経過観察が必要であり、大体は手術当日+翌日+3日後+1週間後というのを1セットとして通院するよう指導しているところが多いと思います。従って、両眼で手術する場合は、この通院数が2倍になりますから、単純に考えると同時手術したほうが、手術後の通院の頻度は少なくなるという事で、仕事が忙しい方や、遠方からの通院が大変なため通院回数を減らしたい方にはいいのではと思います。

 ②:こちらは、上記①とも関連しますが、通院回数が少ないという意味では、医療費の抑制につながることは想像できると思います。

 ③:こちらは手術後の眼内レンズの予定焦点距離にかかわる問題です。というのも、手術後に見える焦点距離というは患者さんの希望に応じて設定するのですが、両眼が近視の患者さんが、”両眼とも遠くを見えるようにしたい” と希望した場合、左右を別々で手術をすると、先に手術した眼は遠くが見える+手術をしていない眼は手元が見える、といった、左右のバランスが悪くなることが一過性(左右の手術が終わるまで)に生じます。ただし、両眼の手術が終わった段階では、バランスの悪さはなくなりますので、一時的なデメリットとなります。ただし、これは後で説明するレンズの焦点ずれへの対応にも通じるメリットにもなりますので詳細は⑦の項目をご参照ください。

 ④:こちらの項目は、手術当日のお話です。通常片眼の手術直後は眼帯をして帰っていただくことになるのですが、両眼同時に手術する場合は、両眼に眼帯をするわけにはいきません。従って、両眼で手術をする場合は眼を解放した状態でプラスチックの眼帯などで帰宅することになります。大多数の方はある程度見える状態で帰宅することになりますが、中には手術に時間がかかったり、目の表面などがむくみやすい方は、手術直後は両眼ともぼやけて見えにくくなる可能性があります。従って、手術の日には少し見え方に不都合が出る可能性と、手術の行き帰りには付き添いの方がいることが望ましいと考えます。

 ⑤:こちらは④にも通じることですが、手術当日ならびに翌日も術後の炎症などが強く出た場合、両眼がともに見えにくくなる可能性があるという事で、場合によっては2-3日程度ぼやけ感が出る可能性があります。ですので、逆に別々に手術をする場合は、残っているほうが見えていれば、ある程度は日常生活をカバーできるというメリットになります。

 ⑥:これについては、最近両眼手術をする施設も増えてきていますが、感染のリスクに関する話です。もともと、白内障手術の感染リスクは0.05%=2000件に1件位といわれていますが、万一にも感染が片眼に起きた場合、反対側にも波及してしまうリスクがあるという事です。特に、目の表面には様々な雑菌がいて、中には感染を引き起こしやすい雑菌が潜んでいることがあります。もちろん、医学的根拠に基づいた消毒をして、適切な機材を用いて手術はしますし、当院でも感染症を起こした事例はありませんので(2020年9月現在)、頻度が高いというわけではありませんが、一度感染症を起こすと視力低下や、最悪失明につながる可能性があるという事で、それらの手術リスクの回避というのが、別々に手術をする考え方です。

 ⑦:最終的に当院が最も重視しているのが⑥の感染への対応とともに、こちらの焦点ずれへの対応のために、別々に手術することを患者さんに推奨しています。というのも、③で述べた通り、患者さんの目に挿入する眼内レンズは、患者さんの希望した見たい距離= ”予定焦点距離” に合わせるわけですが、どうしても人間の目ですので、手術前の検査で設定した予定焦点距離が、手術後にズレてしまう場合があります。従って、両眼を別々に手術することで、先に手術した眼の結果が多少ズレた場合は、そのズレの値を参考に、反対側の眼の予定焦点距離を微調整することで、両眼の見え方をカバーでき、より良い視力を患者さんが享受できるようにと考えているからです。逆に言うと、両眼を同時に手術したときに予定焦点距離がずれた場合は、補正ができないというのが大きなデメリットと考えています。

 上記一覧は、私の個人的見解によるところがありますので、他の先生はこう言っていたなど様々な意見もあることと思います。ただ、結論から言うと、”患者さんの希望”と、”担当医師の治療に対する考え方の一致” を根拠として、両眼を同時にするか、別々にするかを決定するという事でいいと思います。私自身も両眼の同時手術はありかと思っておりますが、⑦のポイントが一番大事だと思って白内障については、両目とも別々の手術との方針としていますので、その辺りは皆さんも担当医とよく相談して決めてくださいね。