うえだ眼科クリニックの
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アイリスフック(虹彩拡張器)を使った 難症例白内障に対する手術について

2019年10月20日

 先日手術をさせていただいた患者様が、少し難症例に分類される患者様でしたので、今回は院長の上田がどのように対応しているかなどをブログで記載させていただきます。

 白内障は、目の中にある水晶体が加齢によって濁ることによって起こる疾患ですが、それを綺麗に取り除き、新しく人口レンズを移植することで視力を改善するのが白内障手術です。今回の症例は具体的には”小瞳孔”といって、黒目の真ん中に光を通すために開いている”瞳孔”が、お年をとったり各種の病気や内服のために開きにくくなっているために、手術が難しくなる症例でした。具体的には下の図1は通常の方の瞳孔の開き具合であり、図2は今回の症例の様に少し瞳孔が開きにくくなっている状態です。こういう状態で手術をする場合、中央の手術をする空間が十分に確保されていないために、予期せぬ合併症に見舞われることがあります。

図1、通常は瞳孔がある程度開いています。
図2、少し開きが悪い”小瞳孔”です

 実は、この症例はそれほど”小瞳孔”ではなく、もっと開かない症例(開きがこの半分以下や、瞳孔が癒着して固くなった症例等)の手術もするのですが、年齢が90歳という事や、これまでの経験上こういう症例では手術中にどんどん瞳孔が縮んでしまったり、”IFIS=手術中瞳孔軟化症例” という茶目(=虹彩)が柔らかくなってトラブルを引き起こすことがあるのを直感で感じたために、”アイリスフック” を使用して手術をしました。

 具体的には開きの悪い瞳孔を、長細いフックのようなもので拡張するのですが、それを手術中に取り付けると以下のような本来丸く開くはずの瞳孔が四角く開かれた状態になり。手術をするための空間が保持されます。下の図3で青い糸のようなものが、アイリスフック(虹彩拡張器)と呼ばれるもので、他にも円形に拡張できるものなどがありますが、経験上こちらのものが一番扱いやすいため、私はこちらを使用しております。

図3、四方にある青いプラスチック片を瞳孔にひっかけて開いています。

 こちらを使用することで、安全に白内障の手術中の合併症を起こすことなく終了することができ、手術終盤には図4のように眼内レンズがしっかり入った状態となります。最終的には、フックを除去して図5の様になって手術が終了します。実際はこのような器具を使用していると、時間がかかることもあるので、これくらいであれば、アイリスフックを使わない先生もいるとは思いますが、この辺りはこれまでの経験をもとに合併症のリスクを最小限に抑えたうえで手術に臨むべき、と考えておりますので、手術の時間を気にせずゆっくりと丁寧に手術をさせていただきました。

 おかげで、手術翌日の患者さんの ”明るくなってよく見えます” という、喜びのお言葉をいただくことが出来ました。この瞬間が最高の報酬だと思っておりますので、これからも安全かつ、丁寧に手術をしてゆかなければと思った症例でした。

図4、中央に人口レンズが入っています。
 図5、アイリスフック除去後